イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―


祥太はみんなの人気者で、誰にでも優しい。
けれどそれが、私には優しくなくて。

「女の子は、付き合ってる人がいるのは知ってる、だから諦めるから、キスして欲しいって言って、祥太は困ってた。
でも、女の子が泣き出して。それを見た祥太が、しばらくおどおどして慌てて……でも、泣き止まない女の子見て、分かったって」

重なる影は教室に長く伸びていて……私はそんな影をぼんやり眺めていた。

ショックだった。平気でキスしちゃう祥太が。
多分、あれが祥太を諦める、きっかけだった。

「私だけのものだと思ってたのに、祥太はその手で女の子に触って、キスして……。いつもの笑顔で私のところに戻ってきた」
「あいつ、そういうところデリカシーないっつーか、ちょっと考え方ズレてるからな。
優しすぎるっつーのは言葉が違うけど」
「祥太のそういう部分、なんとなく分かってたから……祥太自身に悪気はないんだし、私も忘れようと思った。
大学行ってからもやっぱり祥太は人気者で、色んな子に好かれてて。目の前で泣かれたり傷ついた顔されると、断りきれなくて……。
最初の頃は、それを知る度に祥太を責めたけど……私が許すとその後はいつも通りで、まるでそんな事なかったみたいな態度を取るから、私も引きずってないで忘れなくちゃって……無理やり気持ちをぼやかしてた……」

そこまで言ってから目を伏せて。
それから、絞り出すように声を出した。

「そしたら……いつの間にか祥太を好きだって気持ちさえ、見えづらくなってた。
祥太が今でも好きなのに……その中に、肝心の“好き”が見えないの」

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