イケナイ恋事情―私の罪と彼の罠―


胸騒ぎがするのは、何に対してだろう。
近づく風間になのか……それとも、入れ替わろうとする心の中の人物になのか。

気付きかけている、今まで誤魔化し続けてきた本当の気持ちになのか。

どうしたいのか、どうするべきなのか。
目を逸らす事ができなくなってきた答えに、喉の奥のからじわじわと苦しさが蔓延する。

「祥太が好きだって、知ってるでしょ」
「知ってるよ。だから言っただろ、祥太を好きなままでいいって」
「やっぱり……無理やりにでも追い帰せばよかった」

こうなる事を心のどこかで分かっていたのに。
強引にでも、ケンカしてでも風間に帰ってもらえばよかった。

スリッパをはいたお互いのつま先が、コツンとぶつかる。

さっきよりも高く昇った太陽が、この教室にも光を届け、宙を漂う埃がキラキラと光っていた。

「おまえが泣いて騒いだところで帰んねーよ。
祥太との思い出に浸りにきたっていうおまえを、ひとりでいさせるわけないだろ。
おかげで、おまえについて回ってる間ずっとイライラさせられた」

そう言って、まるでそのイライラを吐き出すようにため息で逃がした風間の手が、私の頬に触れ……顎にかかる。
そっと、でも力強い手に、顔を上げさせられた。


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