昨日の友は今日の恋人!?~甘い視線で迫られて~
「桜、あの状態で寺嶋さんに任せちゃってよかったのかな?」

ガラガラと音のする戸を開け焼肉屋さんの外に出ると、初夏の風が奏多と私の間を通り抜けた。

足元がなんとなくふわっとして、私は先に立つ奏多の腕を掴む。すると彼は私の指を絡めるように握りなおし、ゆっくりと歩き出した。

「さぁ? でも寺嶋さんならうまくやるんじゃないの」

「奏多、冷静っていうか、言い方がひとごとっぽい」

「どんな言いかたをして欲しいわけよ、紫乃チャンは」

「どんなって。……だって」

奏多はゴニョゴニョと言う私の顔を覗き込み、いつものように仕方のないヤツと言わんばかりの笑みを浮かべた。

「あそこで俺らが陪審員まがいなことしたら、余計にこじれるだろ。『寺嶋さんが責任持って面倒を見るから大丈夫』って、言ってほしいんだよね、紫乃は」

私の目には、寺嶋さんは桜のことを思ってるよう見えたのだけど、奏多は? 同じ男の奏多にはどう見えてるのか、知りたかった私を彼は見透かしていた。

「……あんな桜、見たことなかったのよ」

奏多は繋いだ手をグイッとひっぱり体の距離をつめる。

「……甘えすぎると手痛い逆襲を喰らうから、女は怖いね。教訓、教訓」

「甘えてるって、奏多も?」

甘やかされてるの、私だと思うんですが。

甘やかされてるっていえば、さっきの会計の行方だ。

「あっ。さっきは奏多に支払い任せちゃったけど、あとで払うから。ちゃんと金額教えて?」

「安い店だからいいよ」

単価が安い店とはいっても、女のふたり連れとは思えない勢いで焼いて飲んだ自覚はある。

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