ミステリー
清香は、付き纏われることとつきまといの加害者への不安と恐ろしさといらだちから、しばらくの間、泣き止まなかったが、やがて、落ち着いた表情になり、冷めた紅茶を飲んだ。


『ありがとう、
少し、落ち着いたわ、ありがとう、ほんとに、ありがとう。
ところで、あなたの名前は?あなたも大学生?』


清香が尋ねる。


『俺さ、
実は悪魔であって人間ではないんだ。清香に任せるぞ、信じるか信じないかはな。』

というと、
悪魔がいたずらっぽくウィンクする。


『悪魔?』
清香が、驚いたように言う。


『わたし、悪魔さんの言うことを信じる。
ありがとう、悪魔さん。
早いうちに、誰かに相談すればよかったのかも、でも、限界になる前に悪魔さんがわたしの苦しみを見抜いてくれて助かったわ』
と、清香。


『いいっていいって。
俺も、つきまとう奴はかなり苦手だし、
好きになれないな。
それと、つきまとう奴って自分勝手で自分を愛情深くていいやつと勘違いしてるだけさ、相手ではなくて自分自身を愛してるだけだよ、
つきまといなんて本当の愛情や誠意ではねーよ、


ここだけの話だがな、
俺も昔付き纏われたり、誘いを断った後もしつこく誘われたら待ち伏せられたりしたことが、あってさ、
本当不快だったな!
そういう付き纏いや待ち伏せは、本当の愛情や誠意っていわねーよな、相手に不安がらせたり迷惑かけたりしてるだけだし、愛情っていわねーし!』
と、悪魔。


悪魔が伝票をレジへ持って行き、全額払った。

それから二人は喫茶店をでて、教習所へ戻る。

『清香、教習所の人に相談するか?おまわりさんのほういいか?お前に任せるよ?』
と、悪魔。

『教習所の人にするわ』
と、清香。



悪魔と清香は、教習所の本館に入り、受付へ行く。
本館の一階が、受付と待合室、トイレ、そして休憩室からなっている。


当然、悪魔を見てたくさんの女の子が、振り向いた。

『あの、清香さんにつきまとう教習生がいるので、相談したいんです。

大切な彼女がつきまとわれてるので、彼としては見過ごせませんし俺までかなり不安でたまりません。
何より彼女、
付き纏いと待ち伏せられるせいで
眠れず、さっきも
ドブに嘔吐したんです、
それくらい追い詰められてて大変なんです
または、最寄りの警察署にも相談したいですね』

悪魔が言った。

清香は、内心とても、うれしかった。
悪魔が自分の彼のフリしてくれるだけでも、心強い。


『それはかなり大変です、こちらで相談しましょう』
受付の女性の一人が、
悪魔と清香を、二階の空き教室へ案内する。
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