ダイヤモンドの未来
「患者か?」

と蒼介に聞く。 

「あー、早川先生に頼まれた患者。」

そういえば、内科の合併症を持つ新患が入院していた。誰もいないのをいいことに、普段ならすることのない話しを続ける。

「真美ちゃんなら、言いそうだけどな。」

「それが、けっこう隠すな、巧妙に。何度か怒ったけど。」

意外だった。

「何でなんだろうな。」

疑問に思う俺。

「こういうときぐらいしか、彼氏が医者のメリットはないと思うけどな。ただ、具合悪いからすぐ来てっていうようなタイプとは続かないのかもしれないな。」

真美と蒼介の付き合いはもう長い。色々悟っているらしい。確かに、具合が悪いからとここぞとばかり甘えられれば、引いてたな。

しかも、香江は、お金も遠慮しがちだ。俺が払おうとするときは、本気で財布を出すし、本気で払おうとする。今まで、彼女どころか、ただの飲み会のメンバーでさえも、医者がいれば出してもらうのが当然という雰囲気だから、香江の行動は意外だった。

「香江ちゃん、医者苦手そうだもんな。」

蒼介のだめ押しに、

「ああ。」

と頷かざるをえない。

「それにしても、病棟でこんな話をするとはな。」

今まででは有り得ない状況。

「まぁ、院内恋愛中だからな。」

「はっ、なんだそれ。」

同じ年の男から聞くには引き気味のセリフに、

「真美曰わく、社内じゃなくて院内だからと。」

「まぁ、間違ってはないけどな。」

当直の夜は長かった。

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