エターナル・フロンティア~後編~
彼の言動と所業に対し本質を知らない者が目の当たりした場合「悪魔」と罵り、彼の存在を批判するが、レナはユアンの生い立ちを聞いているので「恐ろしい」と口にするがそれ以上の言葉は続けない。ある意味、自分の目の前にいる者は現代という紆余曲折した世界が輩出した闇の被害者。
それを「歪み」と表現するべきか。誰もが体内に抱き続けている歪みは時として身体の奥底まで侵食していき、その者を全くの別人へ作り変えてしまう。
レナが参加していたプロジェクトも、歪みによって侵食されてしまい大幅に変化した者達の発案が切っ掛けといっていい。
ユアンの義父も歪みによって変化した感情を養子ぶつけ相手の精神面を壊し、自分の存在を脅かす「悪魔」と呼ばれ恐れられる者を作り、全ての地位や名誉を奪い取られ自滅した。
歪みに侵食されないよう自身を戒め、多の者達の迷惑にならないように生きなければいけないのだが、果たして人類にそれを実行できるというのか。本当に可能であったらいまだに存在する小競り合いは消え、聖人君子ばかりの世界になってしまいそれはそれで気持ちが悪い。
所詮、人類は歪みを完全に払拭することはできず、それを失ってしまえば生きていけないということを本能的に人類は知っている。現にネットの世界には、嫉妬と本音が渦巻いている。
「何がいいたいの?」
「だから、貴女が参加したプロジェクトは歪みがそうさせたといっていいのです。そう、僕は思います」
「その言い方、矛盾が多いわ」
「そうでしょうか」
「貴方は私に、プロジェクトの概要を語れと言ったわ。それが私の使命とばかりに――でも、次に言ったのは本能だからと言う。これを矛盾と言わなくて、何を矛盾と言うのかしら」
「僕は、このように思うのです。貴女がプロジェクトに参加したのも、自身が持つ歪みから発生したものからだと。しかし我々には歪みの他に理性も持ち合わせており、貴女は時間の経過と共にその理性によって呵責の念に耐えられなくなってしまった。まあ、この言い方にも矛盾は存在しますが、好奇心のままに突き進み意思を持つ生き物を造り出したことこそ、歪みというべきではないでしょうか」
「貴方はどうなの?」
レナの問いに愚問を言いたいのか、ユアンが失笑する。もとよりユアンは、自分が歪みを抱えて生きているということを認識しており、だから「異常を異常と思わない状況」を馬鹿にした。彼の本質を表すわかり易い態度にレナは溜息と付くと、一言「そうね」と、返す。