エターナル・フロンティア~後編~
しかし真実から目を背けては何もはじまらないというのは、身を持って知っている。ソラは深呼吸を繰り返した後、自分自身に言い聞かせ気持ちを落ち着かせるとディスクの中身を確認する。
ディスクの中身というのは、映像作品だった。映し出されているのはソラの養父アレクで、これから先自分の身に何かが起こることを予期しているのか、神妙な面持ちを浮かべていた。
沈黙を続けていたアレクが口を開き、言葉を発する。数年ぶりに聞いた養父の声音に、ソラの胸はきつく締め付けられていく。同時に養父との慎ましやかな生活を思い出し、目元が熱い。
養父アレクが語るのはソラの出生の秘密と、常識を逸脱したプロジェクトに参加してしまったことに対しての後悔の言葉。当時は設備が整えられた最高の環境で、自身が持つ能力を最大限に発揮できることに喜びを感じていた。だが、徐々に感情の変化が生じてきたという。
裏切りの切っ掛けは、妻の肉体を使用したという点。確かに妻の体内に宿っているのは自分達の遺伝子を受け継ぐ子供ではないが、日に日に大きくなっていく妻の腹を見ていると「自分は何をやっているのか」と、プロジェクトの意味と自分の野心に疑問を抱きはじめた。
このままでは、この子に自由はない。
一生、道具として生きる。
そして、最後は――
勿論、腹の子供は我が子ではないので、自分の大事な人生を犠牲することはない。だがアレクは腹の子に対し我が子に似た愛情を抱きだす。その結果、レナが話した通りアレクは裏切った。
もし仲間を裏切らなければ、どのような人生が待っていたのか。ヨシュアのクローンを作り出した功績が認められ高い地位に就いていたかもしれないが、裏切りによって地位も名誉も失った。
また、妻は力を持つ子を産んだことにより精神的に病み、炎に包まれ自宅と共に焼け死んだ。仲間が裏切り後のアレクの人生を知ったら「惨めだ」と罵り嘲笑うが、アレクは言う。
『後悔はしていない』
と――
寧ろ満足しているという。
裏切りによって多くの物を失ったが、同時に最高の存在を手に入れたという。それがソラという名前の我が子であり、貧しいとまではいかないが慎ましやかな生活の中に、確かに幸福感が存在していた。できるものなら大きく成長した我が子を見たいが、それが無理だとアレクは語る。