エターナル・フロンティア~後編~

 やはり、アレクは身に迫っている危険に気付いていた。仲間を裏切った時点で死が訪れることを理解していたのか、時折柔和な表情を作るがすぐに強張ったものに変化してしまう。

 絶望的な状況に置かれていながらも我が子の身を第一に考えるのは、真の親心というものか。アレクは自分の死後ソラがどのように生活しどのような人間関係を築くのか、心配で仕方がなかった。

 身の上を本当の意味で理解できるのは自分だけで、それ以外の味方は数える程度しかいない。また、自分が殺害された後、裏切った仲間が我が子を連れ戻しに来るのではないかと恐れた。

 彼等に捕まれば我が子がどうなってしまうのかは、アレク自身が一番わかっている。できれば彼等に捕まらず平穏な日々を送って欲しいものだが、それが儚い夢だとアレクは呟く。

『お前は、罪滅ぼしと思っているのか。いや、思っていても仕方がない。参加していたというのは事実だから』

 心境の変化で仲間を裏切り、自分達の手で造り出した子供を育てている行為を「罪滅ぼし」と罵倒されても、アレクは一向に構わないという。見方を変えれば彼の行動は罪滅ぼしそのもので、通常の感覚では血の繋がっていない、ましてや人工的に造り出した子供を育てようとは思わない。

 しかしアレクはソラを我が子同然に愛情を注ぎ、きちんと教育を施してくれた。それにより高い教養を身に付けることができ、不便はしていない。また養父との生活は慎ましやかなものであったので滅多に遠出はできなかったが、アレクは休日ソラと共に近所に買い物に行くことを好んだ。

 普通の父親以上のことをしてくれた養父をソラ罵倒しようとは思わない。いや、これだけのことをしてくれたのだから、絶対にしてはいけない。寧ろ、溢れんばかりの愛情を注いでくれた養父に感謝している。だから養父の死はソラを苦しめ、心に幾重にも深い傷を負わす。

 生きていて欲しかった。

 ずっと、一緒にいたかった。

 また、義父(ちち)と呼びたい。

 脳裏に浮かんでは消えていく養父との大事な思い出に、目元に溜まっていた涙が頬を伝う。何度も涙を拭うが止まらず、それどころか涙の量が増えていき数的床に向かって落下する。

 その先に待っていたのはソラの足下で礼儀正しく座っていたリオルで、涙は偶然鼻の上に当たった。頭上から何が落下してきたのかわからないリオルは、反射的に鼻先を舐め上げる。すると舐めた涙がしょっぱかったのか、クシュンっと可愛らしいくしゃみをして、前足で鼻先を器用に掻く。
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