エターナル・フロンティア~後編~
正直、多くの者から迫害を受け自身の力を無理矢理封じる生活をしていると、時折「力を自由に使いたい」という願望が生まれないわけではない。それに力の威力は精神面に強く作用されるので、最強と呼ばれる力を有しているソラの場合、周囲への配慮も欠かせない。
何と不自由か。
ユアンの甘い誘惑が感情を揺さ振り、ソラの心に闇を広げていく。それに抗うように「駄目だ」と自身に言い聞かせるが闇の侵食を止めるだけの力は発揮せず、それどころか精神を狂わす。
「封じるのは勿体無い」
力を使用させたいのか、ユアンの囁きが続く。彼の言葉に乗れば自由に力を使用することが可能だが、ソラが持つ力は相手に癒しを与えるのではなく肉体そのものを破壊してしまう。
この力で、一体何人の肉体を傷付けてしまったのか。力を使用したいという欲求と使用してはいけない理性が混じり合い、ソラの思考を混乱させていく。このままではユアンの策略に嵌ってしまうと危惧していると、レナの鋭く凛とした言葉がソラの思考をもとに戻す。
あと一歩で――
ソラを落とそうとしていたユアンにとって、レナの邪魔は大きかった。彼は気付かれないように顔を歪め作戦が失敗したことに舌を鳴らすが、唯一ユアンの裏の一面に気付いていた者がいた。それはソラの足下で休んでいるリオルで、気に入らない相手の裏の一面に反応を示す。
「どうした?」
「多分、何かを感じ取ったのね」
「彼……ですか」
「そう。犬という動物は、私達以上に感性が高いとされているわ。だからこの子だけ、何かを知ってしまった。それがどのようなものなのかは、彼に聞いても教えてはくれないでしょうね」
「決め付けはいけません」
本性を隠すユアンに、レナはそれ以上の追求することはしなかった。様々な思惑が渦巻く世界で器用に生きている者。相手を騙すことに関しては一流で、長く生きているレナも手玉に取った。だから深い追求は自分に不利に働き、逆に彼の話術で言い包められてしまう。
しかし、彼が何かを隠しているのは間違いない。その証拠にリオルが反応を見せ、ユアンに向かって歯を剥き出しにしている。レナは、ユアンの作戦はわからなかった。わからなかったが彼と話しているソラの表情が真っ青だったので、彼女は彼等の会話に割って入った。