エターナル・フロンティア~後編~
彼は、誰も救わない。
ただ、欲望のままに動く。
ユアンは、プロジェクトの概要を聞きそれを盾に取ろうとしている。また、ソラを手中に収める気だ。彼は、プロジェクトの唯一の成功。絶大な力を持ちつつその精神は不安定で、自由に操れる。
自分の出生の秘密を知った今、表面上は冷静さを保っているが何かの切っ掛けで崩れてしまう。彼の養父アレクは、彼を愛したからこそ共に逃げた。しかしそのアレクは殺され、真の意味でソラに愛情を注いでくれる者はいない。そして、話術に長けたユアンの存在は危険すぎる。
それだというのにユアンに過去の行いを責められ、贖罪の意思のままソラの過去を話してしまった。だが、話術以外にも情報収集能力が高いユアン。いずれはソラの出生の秘密を掴み、彼に真実を突き付けているだろう。それなら自分の口から話した方が良かったのかと、レナは思う。
どちらにせよ、ユアンに有利に働くのは間違いないだろう。これまで考えて行動しているとしたら、彼の思考能力は計り知れない。天才――いや、そのような言葉では彼の全ては証明できない。
このままソラをユアンから奪い取り、自分のもとに置いておいた方がいいのではないか。だが、それは一時的な保護にしかならず、レナ自身いつまで生きられるかわからない。それにこれではソラの救いにはならず、下手すればレナの自己満足で終わってしまう場合もある。
「さて、そろそろ僕は戻ります」
何一つ言葉を発しようとしないレナは、厳しい表情を浮かべている。その表情から彼女から聞き出すことはこれ以上何もないと判断したのか、ユアンは帰宅の意思をレナに示した。
「さあ、君も……」
ユアンは腰掛けていたソファーから腰を上げると、なかなか立ち上がろうとしないソラを促すが、やはり立ち上がろうとはしない。自分の言葉に従わないことに業を煮やすが、声を荒げ無理矢理従わせようとはしない。それどころか好きにしろと言わんばかりに、ソラを置いていく。
「……気を付けて」
「あの人……ですか」
「そう」
老い先短いレナが言えるのは、これしかなかった。レナはアレク同様にソラの幸福な人生を過ごして欲しい他に、友と呼べる人物や寄り添って共に生きてくれる人物を頼るようにいう。信頼できる人物が彼の側にいれば、ユアンの思い通りにはいかないとレナは考える。