エターナル・フロンティア~後編~

 ソラだけではなくイリアまで動揺しだしたことに、ユアンは舌打ちする。しかしこのような状況の中でも冷静なのがユアンの特徴で、彼はイリアの手首を掴むと自身の側へ引き寄せ落ち着くように促す。そしてこの場所にいてはいけないと話し、足早に立ち去ろうとする。

 周囲の者達の視線が、彼等に集中する。特に視線が集中するのはソラで、彼等は一般の者達と違い珍しいモノを見るような目付きだった。研究を行いたい身体を調べたい――まさに彼等の視線は、それに等しいものだった。それを全身で感じ取り、反射的に視線を逸らす。

 ユアンも身体に纏わり付くねっとりとした不快感たっぷりの視線に気付いたのだろう、周囲にいる者達に「邪魔をするな」という雰囲気を見せつつ威嚇する。ユアンの殺気の篭った威嚇に、ソラに視線を向けていた者達全員が竦み上がり、一瞬にして黙らすことに成功した。

 ユアンの裏の一面を目撃した今、周囲の者達は動くことはできない。その間を抜け、ユアンはソラとイリアを連れ建物の外へ急ぐ。この時は何事もなく逃げ出すことができたが、多くの者達の前で力を使用してしまったことで、ソラの精神面を苦しめていくことになった。


◇◆◇◆◇◆


「……ソラ」

「心配しなくていい」

「で、ですが」

「薬を投与したから、これで安定する」

「眠っています」

「これは、そういう薬だ。さて、僕はこれで行く。看病等は、君に任せよう。その方がいい」

「本当に、有難うございます。もし、ラドック博士がいなかったと思いますと……ソラが……」

 心の篭った礼の言葉にユアンは口許を緩めると、イリアに向かい「何かあったら連絡するように」と言い残し、部屋を後にする。現在、彼等が休んでいるのは高級ホテルの一室。あの後真っ直ぐホテルに戻り、ユアンはソラに精神面を安定させるということで薬を投与した。

 投与された薬が効いているのか、ソラはベッドの上で横たわり規則正しい寝息を立てている。イリアは扉が閉まる音を確認した後ベッドの側に行くと、瞼を硬く閉じているソラの顔を眺める。このように幼馴染の寝顔を見たのは遠い日の出来事で、あの時と顔形と雰囲気が全く違っていた。
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