エターナル・フロンティア~後編~
「……なんでもない」
「嘘! ソラが泣くなんて、はじめてだもの。いつもいつも我慢していて、だから今日は……」
自分の前だけは弱音を吐いてもいいと、イリアはそっと囁く。彼女の優しさが心に染みたのだろう、ソラの身体は過敏に反応を見せる。ぐっと涙を堪えた後、心の奥底に溜めていた感情を吐露し、誰にも迷惑を掛けない普通の生活を望んでいることを震える声音で話す。
イリアは力を持つ者ではないので、ソラの全てを理解できるわけではない。それでも一部分を背負いソラの負担が軽くなればいいと思い、彼が語る話を静かに聞き入り時折頷く。途中、過去の出来事を思い出し話すことが辛くなってきたのか、最後まで話すことはしない。
「……御免」
「いいの。ソラや皆が悪いわけじゃないわ。貴方の力は、おかしくない。きちんと学ばない方が悪いの」
それは詭弁に等しい言い方であったが、側でソラが受けている数々の仕打ちを見続けていると、そのようにしか言えない。毎日のように苦しみ、それさえも大声を上げて言うことができない状況で生きているソラを見ていると、同情心より哀れみの方が強くなっていく。
「もし、力が無くなれば……」
「できるの?」
「無理だ。それができないと、言っていた。それにもっと力を持つ者がいたら、違っていた」
大は、小に勝つことはできない。大が大声を上げてソラ達を批判すれば、小であるソラが負けてしまう。このような弱弱しい姿を見ていると、絶対に大の勢力に参加するわけにはいかない。イリアは身を丸めているソラに微笑みかけると、自分は味方であることを告げる。
「……有難う」
「いつもソラの世話になっているから、こういうことしかできないもの。だから、今回はいいの」
「楽になった」
「良かった。また苦しくて辛くなったら、私に言っていいわ。このように、聞くしかできないけど」
イリアはそれしかできないと言っているが、ソラにとってはそれで十分であった。ソラは横になっていた身体を仰向けにすると、何を思ったのか手を伸ばしイリアの細い身体を引き寄せ強く抱き締める。突然の行為にイリアは動揺を覚え、頬が紅潮していくのがわかった。