エターナル・フロンティア~後編~
抱き締められていることは嬉しく幸福を感じるが、気持ちを冷静に保てるほどイリアの精神は強い方ではない。結果、最初は顔だけが赤面していたが、今では身体全体が真っ赤に染まっていく。イリアの変化に気付いたソラはクスっと笑うと、離れた方がいいか尋ねる。
「へ、平気」
「じゃあ、暫くこのままで……」
「う、うん」
「ところで、仕事は?」
「平気。ちょっと忙しいけど、遣り甲斐がある仕事だもの。それより、ソラは? 身体の傷が……」
「これは、古傷だ」
イリアは幼い頃からソラと向き合っているが、身体の至る箇所に傷痕があることは知らなかった。就いている仕事が仕事なので仕方がない部分もあるが、それにしても傷痕が多い。切り傷に擦り傷――それ以外の傷も多岐に渡り、ソラの身に何が起こっているのか心配する。
しかしソラは、それについて語ろうとはしない。ただ「仕事中に負った怪我」と言い、言葉をはぐらかす。いつものイリアだったら彼の言葉を素直に受け入れ、それが正しいと思うが、身体の傷を見ている今、ソラの言葉を簡単に受け入れることはできず本当にそうなのか尋ねる。
「……本当だ」
「嘘よ」
「どうして、そう思う」
「だって、今……」
イリアが先程の発言を「嘘」と見抜いたのは、互いの身体が密着しているからだった。冷静が特徴であるソラの心臓が微かに鼓動を強めたことにより、イリアは発言が嘘とわかった。そうソラに告げた時、再びソラが反応を見せる。そして、そっと彼女の髪に顔を埋めた。
「イリアは、知らない方がいい」
「どうして?」
「あの世界は……タツキさえ、拒んだ。イリアはあの世界を目指そうとしているけど、オレは……」
「恐ろしいの?」
それについて、ソラは無言で頷く。あの世界にいれば精神面の歪みは確実で、血の臭いが付き纏う。ソラ達能力者の身体を研究するにあたって人権を無視し、大量の薬を投与し続け肉体を切り刻む。ソラの肉体に残っている傷痕は彼等の狂気の証明であり、彼の人生を物語っていた。