天才に恋をした
「りっくん、来たよ」

出掛ける直前らしい母ちゃんが、嬉しそうに言った。


「陸玖?」


本人が入ってきた。


「お邪魔しまーす」

「りっくん、ゆっくりネ!すぐ戻ってくるから!」

「大丈夫です。おかまいなく」

慌ただしく、母ちゃんは出て行った。


「お前、どうしたの?」

「駅前の予備校で、模試受けてきた」


模試…って。


「受験生みたいだな」

「模試やってるのが、親戚なんだよ。受験者を増やしたいんだって」


なるほどな。

教育者一族に生まれると大変だ。


「おお~!ちっちゃっ!」


本人が大変だと思ってるかは知らんが。


「コーヒーでいい?」

「ありがとう。プリン買ってきた」
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