天才に恋をした

20-2

グラウンドの横から裏門を抜けて帰る日は、予備校がある日だ。


苗が、ぼんやりと声の主を探す。


陸玖が笑って、手を振る。


「苗ちゃん!こっち!」


苗も機械的に手を振る。



角田が言った。

「苗ちゃん、分かってるの?」

「さぁ?」



陸玖が笑う。

「…可愛いな」


「っざけんな…」

と思わず口走った。



周りにいた数人が、驚いた顔で見た。

ただ、陸玖は聞こえてなかったみたいだ。


胸がムカついて、吐き気がした。
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