天才に恋をした
放課後、

「ありがとおーございましたあ!」

いつも通り、練習が終わった。

シャワーが、最高に気持ちいい。

俺って、このためにサッカーやってんじゃね?

更衣室に行くと、陸玖が顔をひきつらせて立っていた。

「来てる」

「何が?」

「乃愛だよ」

俺は、更衣室から顔を出した。


乃愛がそこにいた。

「ゆっくりでいいよ」

当然のように言われ、俺は無言で顔を引っ込めた。



「いるな」

「いるだろ」

「キモイな」

「どうする?」



取りあえず、着替えるしかない。

着替えて外に出た。



乃愛の顔を見ないように、足早に…

「待って~私も行くよ~」


来た。

追いかけて来た。


「俺は帰るけど」

「私も勉強教えられる。大丈夫」

「…いや。お前、昨日…」

「昨日はビックリしちゃっただけ。何も相談してくれないんだもん」

「来なくていい」

「どうして?それはオカシくない?自分が教えたいワケでもあるの?」

「あるわけねーだろ」

「私、いつも妹たちに勉強教えてるんだよ?」


確かに、乃愛は苦手科目がない。

その点は尊敬している。

乃愛が、小さな顔を上げて真っ直ぐに俺を見た。


「力になりたいの」
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