天才に恋をした

24-2

ひめゆりの塔まで来た時だった。



やけに明るく、やけに静かな、その場所を目にした時、

俺はすぐに苗の姿を探した。


苗はいた。



日差しの中で、今まで見たことのないほど、まっすぐに立っていた。

あどけなくなんて、全然ない。

誰よりも大人びて見えた。



俺は、苗が思い出したくないことを思い出して、

具合が悪くなるんじゃないかと思ったんだ。



でも苗はキチンと自分で立っていた。

まっすぐに掘の中を進んでいた。




綺麗だと思った。

真剣で妥協しない瞳。

簡単に開かない口元。

反対に髪はポシャってて、優しい雰囲気が漂っていた。




苗が動くと、周りの空気もキレイになるような気がする。

内側から白い光があふれ出ているみたいだ。

存在そのものが、綺麗だった。




俺、見つめ過ぎ?

周りを見渡したけど、誰も気づいている様子はなかった。



もう一度、苗に目をやった。

むさぼるように、苗を見続けた。
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