天才に恋をした
元来た道を歩き出した。

ホテル前の駐車場に、陸玖がいた。

陸玖が、安堵したように近づいてきた。


「良かった。先生が騒ぎ出す頃だよ」


陸玖…本当に心配してた顔してる。



「苗ちゃんさ…」

「俺、部活辞める」


沈黙が流れた。



「何…?なん…」

「辞める」

「え…?」



陸玖は、飲み込めないみたいだ。

「辞めるって意味が分からない。理由は?」


俺は何も答えなかった。


いざとなると、言葉が出てこない。



「理由は何なんだよ?お前のことを信頼してるんだよ」

陸玖が詰め寄った。

「俺だけじゃない。チームみんな、真咲を信頼してんじゃないか!それを辞めるって?理由を言えよ」



俺は裏切り者だ。

チームメイトの顔が浮かんだ。

サッカーは学生生活そのものだった。

だけど、止められない。


「俺は信頼されるような人間じゃない!」

「信頼されてるよ!だから理由を言えよ!」


俺は陸玖を見上げた。
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