天才に恋をした
家にたどり着くと、さっそく犬たちがお出迎えしてきた。


「ただいまあ」

「ただいま」


姉貴が陽人を抱いて出てきた。


「お帰りなさい」


苗は疲れが吹っ飛んだように、ニコニコし出した。


「陽人くんに、小さいお茶碗を買ったよ」

「え~!ありがとう。やったね~ハルくん、お土産だって!」



リビングでは、親父もテーブルについていた。

こんなに早く帰るなんて、珍しい。


苗が買った茶碗は、大きな魚が描かれていた。


「さすが南国。大らかな柄だなぁ」


親父が感心する。




苗が陽人を抱っこする。


母ちゃんが言う。

「ハルくん、重くなったでしょ」

「重くなったー」



みんな笑顔だ。

未来を信じている顔だ。



平和。




これも平和だ。

でも言わないといけなかった。




「…親父」

「なに?」

「俺も行く」


リビングが静まり返った。
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