天才に恋をした
「お前さ、乃愛に教えてもらってどうなの?」

苗は、ぼんやりと答えた。

「うれしい」

「うれしいって…勉強になってるのかって聞いてんの」

「なってる」

「問題を解けるようになってんの?」



苗が俺を見つめたまま、フリーズした。



「お前、問題を暗記してない?」

「???????」

「なんだ!その!ふ抜けた顔は!」


俺は思い切り、苗のほっぺたをつねった。



や…

柔らけーーーーっっ!!



慌てて手を離した。

つい、サッカー部のノリで…。



「と、とにかく、なんだろう?なんだ?」




手にまだ感触が残っている。

苗がホホをこする。



「あ、うん。すまん。ごめんごめん」



しーーーーーーーーーーーーん…


「何の話だっけな」

「暗記の話」

「暗記か、そう暗記。違うな!テストの話だ!」


俺は必至で自分を取り戻した。



「編入試験の勉強は、どうやってやった?」

「過去問題を見て」

「見て?」

「覚えた」

「それが暗記だっ!」

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