天才に恋をした

30-2

大通りでタクシーを止めて、乗り込んだ。

運転手さんが俺を見て、眉を寄せた。


「どうしたの?」


説明している場合じゃない。


「とりあえず、スカイツリーに」

「遠いし、深夜料金かかっちゃうけど…大丈夫?」

「五万で足りますか?」



運転手さんは、安心したようにレバーを動かした。


「君、ラッキーだよ。金曜はタクシーなんて、なかなか捕まえられないんだから」

車は軽快に走り出した。

暗闇の中で、地図検索した。



くそっ。神社、けっこう多いな。

ただ、近くに小学校があった。

途中に、有名な靴メーカーの本社があったのも覚えてる。



携帯が光り、着信音が鳴った。親父からだ。

着信を無視して、サイレントモードに切り替えた。



前かがみになっていた体を起こす。

ビルの森の中を車は走っていた。
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