天才に恋をした
きっと、これが俺の生き方なんだ。

苗が考えない分の幸せを俺が考えて、実現していくんだ。

そのために、生まれたんだ。



自分勝手な俺が、人の幸せを考えられるように、お節介な両親がいたり、サッカーやったりしてるんだ。



乃愛や元彼女も、そのために出会ったんだ。

どれか一つ欠けても、今の俺にならない。

世話焼きだった爺さんだって、会ったことはないけど、あの親父を育てた。

みんな、俺に関係があるんだ。



その恩や責任をぜんぶ返すなんて出来ない。

爺さんなんて、俺が生まれる前に死んでるし。

だから、別の誰かにパスを回していくしかないんだ。

その一番の相手が、俺にとっては苗なんだ。



スカイツリーが空を占領し始めた。



ようやく見えてきた気がする。


自分のしたいこと、すべきことが。

苗に付いて行くんでも、追っかけて行くんでもない。


俺は…


「この辺でいいかな?」

「はい」


車はゆっくりとスピードを落とした。
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