天才に恋をした
腕の中は無言だ。


「俺から離れたかった?」


頭が動いた。

「違う…」

「じゃあ、どうして?」


長い時間が経った。




やっぱ俺のこと信用してないのかな。

どうでもいい人間に、深い話なんかしたくないのかもしれない。



「こわい」

絞り出すような声だった。

苗は震えていた。



「俺が?」

もう一度聞いた。

苗はすぐに首を振った。

そして言った。



「だって私には…何の才能もないから」
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