天才に恋をした
コドクな魂

33-1

『才能がない』って…苗が?

どうしてそんな事を思ってるんだ?


「お前は天才だよ」

当然、そう言った。


腕の中で苗が激しく首を振った。



「違うよ!違うよ!私は勉強も運動も家事も出来ない!」

悲鳴のような声だった。




「私には何の才能もない!本当は出来ない!何にも出来ない!出来ないの!」

「落ち着け!」

「でもやらないといけない!」

「分かった、分かったから」

「でも怖いの…!」


むせび泣きする苗を抱きしめながら、背中を撫でた。


みんな、出来ない出来ないって言いすぎだよな。

もちろん、俺も含めて…



親父だけが、苗は出来るって信じ続けたんだ。

あのオッサン、やるな。ちくしょう。




少し落ち着いたのを見計らって、苗をソファーに座らせた。



「俺と会う前のことを教えて」


苗の口から、聞きたい。

それが俺の未来だから。

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