天才に恋をした
イモウトができた

1-1

「解散!」

朝練が終わった。

散らばったサッカーボールを後輩たちが片づけていく。



「真咲先輩…!」

小柄な女の子が近づいてきた。


誰だっけ、この子?

考える間もなく、クラスメートの乃愛(のあ)が近づいてきた。


「ダメ。真咲は、練習の後は静かにしてたい人なんだから」


後輩らしき女の子が、がっかりしたように

「あ…ごめんなさい」

と謝る。


「ああ…」

俺は乃愛に目でお礼を言って、その場を離れた。



ゴールキーパーの角田が、俺の肩をつついた。

「いつもすげーな」

「ああ?」

「お前の女房だよ」

「いねーよ、そんなの」



シャワー室に入って、泥を落とす。


生命倫理大学付属命倫高等学校。

幼稚園から大学までのエスカレーター式の学校だ。

右も左も幼なじみのサッカー部で、俺はフォワードをやっている。



隣のシャワー室から、ミッドフィルダーの陸玖が声かけてきた。

「今日、転校生くるらしいよ」

陸玖は理事長の孫だから、どこかで聞いたらしい。



「…知ってる」

「なんて?」

「なんでもねー」

「女の子だって」



もう返事はしなかった。
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