天才に恋をした
「宮崎先生が帰国するってよ」

と親父が言い出したのは、俺の誕生日祝いの席だった。


俺は飲んでいたスープが、鼻に入った。


「ゲホッ…ゴッ!」

「とうとう、ドンが登場かぁ」


母ちゃんが可笑しそうに言う。



苗が顔を上げた。



「いつですか?」

「7月に入ったら、すぐ来るみたい。一応、真咲のことは伝えてあるけど、詳しいことは言ってないから報告しないとな」

「宮崎先生、何て言うかな?」

「まぁ…会ってみないと」


親父の表情は、複雑そうだった。


俺は聞いた。


「反対すると思う?」

「それはない」


即答だった。




苗はいつもどおり、食事をつついている。

自分に起こっていることなんか、興味がないんだな。



「苗、また全国一位だったろ」

「え!」

「うそっ!さすが!」



親父たちの騒ぎように、苗が目を見張った。



「わ~!かんぱーい!」

親父がグラスを上げる。



苗も慌ててグラスを掴む。


そして…

「あ!」

「やっ」


倒した。

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