天才に恋をした

38-3

「え…」

絶句する姉貴に、陽人は不満げな声を上げた。

ほ乳瓶が口から外れたんだ。

再び陽人の口に当てると、手で払いのけられた。



「うそ…」



陽人が本格的に騒ぎ始めた。

自分が話題にされてないと、なぜか分かるみたいだ。




「ど、どうするの?」

「どうするって…」


母ちゃんは、親父を見た。

親父が鼻を鳴らす。


「ないよ!ナイナイ」




日曜日の午後、宮崎先生は苗を連れて昔の仲間に会いに行った。

俺は親父とにらみ合ったまま、二時間が経過。


…この頑固ジジイ。

頭から考えもしない。




俺は、ジネンの意味を調べた。


「自然」って書いてジネン。

「あるがまま」とか「そのまんま」って意味らしい。

俺と苗が結婚することをジネンと言ってくれた先生は、エライ。


大人だ。



「お母さんは、どう思ってるの?」

姉貴が聞く。


「知らなーい」

と気のない声が返ってくる。
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