天才に恋をした
春のイブキ

41-1

週に何度かスキー場へ向かう。

世界有数のコースがいくつもあって、レベルの違う金持ち連中が高そうなウェアを着て、滑り降りて行く。


いつものように滑り終えて、ストックを片付けていると、日本人らしき男の子と目が合った。


童顔だけど…もしかして同じ歳か?

お、近づいてきた。



「日本人?」

「おう。そっちも?」

「うん」


相手が嬉しそうに握手を求めてきた。


「ナカツガワ・シュンイチ……でも日本ではハルイチって呼ばれてたから、ぜひそう呼んで」

「分かった。俺は宮崎真咲」

「宮崎くんは……」

「俺もそれ言われ慣れないから、真咲でいいよ」

「うん」


人懐っこく笑った。

日本人に飢えてるんだ。



「もしかして、エイトブリッジにいる?」

と聞かれた。



「ああ、そこに通ってる」

「ようやく会えたよ~。俺はユングラフトに通ってる。ああ、エイトブリッジにすれば良かったなぁ!調子こいて日本人いない方がいいなんて、血迷っちゃった」


もうすぐ昼だった。


「俺んち来ない?」

「いいの!?やったーーーっ!」
< 234 / 276 >

この作品をシェア

pagetop