天才に恋をした
「シュエと同点かぁ」

春一が感心したように言った。


「模擬テストだけどな」

と、一応謙遜してみる。



「シュエですら五点落としたテストに、同点で一位はすごいよ」


そのシュエは、気にしない様子でテストをチェックしている。


「真咲、ここ」

「ああ、こういう意味か」


苗はいつも通り、春一の隣でリーズ語に取り組んでいる。

英語は完璧に近いから、第二外国語を穴場のリーズ語で受けるらしい。



「まったくリーズ語なんて、ツマじゃなきゃ無理だよ。規則性が無さすぎて、俺吐きそうになっちゃった」

「苗は高等学校の辞書、丸暗記したからな」

「さすが、人間辞書!」

「地図もすごいよ。今いる場所に、百年前何が建ってたとか、千年前の地形とか、みんな頭に入ってる」

「恐ろしいね。医学部でもいいのに」

「研究には向いてるけど、臨床はキツいだろ」


ここにきて、みんなの志望が出そろった。

俺が経営学。

苗が科学。

春一が医学。

シュエが政治学。



「シュエは、滑り止めなんか考えてんの?」

「一応出したよ」

「一応だって!すってき~」


まぁ、シュエは間違いなく受かるだろうな。

苗もいけるだろう。


俺と春一だな、問題は。


「ご飯だよー」

と母ちゃんの声がする。


「真咲とは結婚できないけど~、真咲のお母さんの養子に入るって方法があった~」



…緊張感のないヤツだ。



「苗、今日は俺のとなりに座れよ」
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