天才に恋をした
最終ケッセン

43-1

試験会場は、ワッダーパーク大学の校内にあった。

本校舎のある辺りからは外れた、割りと新しい建物だ。


みんな、あんまり緊張してないな。

むしろ「これで国に帰れる!」って、喜んでる感じだ。



チームごとに、待機場所が違うから、苗とはここで離れる。


「苗……言ってなかったんだけど、俺らのチーム……」

「真咲!苗!」


振り返った。



自分の見ているものを疑った。



は………?




「真咲たちは、どこのチーム?」

「お前、は?……何でここにいんの?」

「ええ、なんでー?」



なんでー?じゃねぇよ……


そこにいたのは、乃愛だった。



でも日本人は、俺らと春一しかいないはずなのに…

俺の目も見ずに乃愛が言った。



「私、ロンドン経由で入ってきたの。苗ぇ…大丈夫だったぁ?大変だったねー。私、すごく心配したんだよ?」

大げさに苗をハグする。



苗、嬉しそうにしてる場合かよ。



聞いてもいないのに、乃愛が困り顔で答えた。


「私、ホントにリーグブルの大学は受けるつもりなかったのねぇ?でも周りがその成績なら受けてみた方がいいっていうから」


ぜったい、ウソだ。

ナゼなら、イギリスから受験する場合、基礎教育校へ入る時には、もうリーグブルに希望を出しておかないといけない。

受験資格をもらうためには、リーグブル独自の単元を履修する必要があるからだ。


受験する意味も分かんねぇ。

このシステムは、難民のための処置だ。

日本人の乃愛にスカウトが来るはずがない。


なにが『周りに勧められた』だよ……




乃愛が苗に話しかけている。


「そっかぁ。私、女性問題は得意なんだけどなー」


対戦グループじゃないらしい。


「苗、行けよ」

「また後で会おう?色々、お父さんの話とか、悩みとか聴いてあげれるよ?」

「苗、早く行け…」


苗が立ち去るのを確認して、俺も乃愛に背を向けた。

いちべつした時に、乃愛のすました顔が見えた。


「アイツが得意なのは『悪霊問題』だ」
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