天才に恋をした
自分の待機場所に入った。


「シュエ?」


顔色が冴えない。

まさか緊張してる?



シュエはイスに腰かけて、誰ともしゃべらず部屋の隅で壁に寄りかかっている。


「どうした」

「近づかない方がいい。移るから」

「風邪引いた?」


シュエの額に手をやる。

じっとりと汗で濡れていた。

あつい!


「よくこれで来れたな」

「家族が来てるから、会場まで…」


ヤバイな。

ぐったりしてる。


「薬飲んだか?」


弱々しくうなずいた。


部屋を出て、ハンカチを水に浸した。

試験まであと10分ちょっとしかない。


部屋に戻って、額にハンカチを当てる。

まわりの人間も集まってきた。


「心配しないで、ちゃんとサポートするから」

「そうだ。君はいかにも参加してるような顔をしていればいい」


シュエが額のハンカチを持とうとした。


「いいから。持ってる。時間まで休んでろ」


シュエが大人しく目を閉じた。
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