天才に恋をした
「あ~~。そうなんだ~~~。へえ。やっぱりそうなんだ~~」
すっとんきょうな声で、乃愛は立ち上がった。
「妹にそういう感情を持っていいと思ってるの?」
乃愛が引きつった笑いを浮かべながら言った。
「そんな感情ない。コイツのことは家族としか思ってない」
「持ってるじゃない!気持ち悪い!」
「お前の方が気持ち悪いよ。お前は、赤の他人だろ」
乃愛の目がギラギラ光った。
「あ、私。やっぱりこの家に必要だわ」
「必要ない」
「ううん。必要必要。苗が可哀想だもん。こんな家に一人で置いておけないよ」
乃愛は、すんなりと苗の隣に腰かけた。
苗のノートを見下ろし、
「うん!上出来上出来!苗、えらいじゃん」
うんざりする。
口で敵う気がしない。
無理やり追い出してやろうか?
でも明日にはまた戻ってくるだろう。
俺は乃愛をにらみつけながらも途方に暮れていた。