天才に恋をした
教室を出て、C組に向かった。

俺の「同居人」がいるクラスだ。



そしてC組には、陸玖がいる。

早速、絡んできた。

「あ、お兄さんだ」

「バカ。ざけんな」



俺は、教室を見渡す。

「どれ?」

「え?」

「アイツだよ」

「知らないの?」

「どれだよ」

「あの子…」



「ジミ」



即座にそう思った。


ガリガリに痩せた小さい子だった。

髪は肩くらい。

ツヤがなくて、顔色も冴えない。

高校生というより、中学生に見えた。



みんなに囲まれて質問攻めにされている。

なのに、ボーッとした顔をしていた。ブサイクじゃないけど、可愛くもない。

例えていうなら…

知名度がない、ゆるキャラ?



これが家に来るのかよ…

関わりたくねーな。


それでも俺は、親父に頼まれた伝言があった。

人をかき分け、近づいて声を掛けた。



「おい」



ゆるキャラが、顔をあげた。

ぼやっとしたツラだなあ。

眼鏡が田舎くさい。


「村瀬だけど…あ、立ち上がらなくていい」


立ち上がり方で分かった。

コイツ、ノロいな。



「今日の夕飯、外で食うから、6時までには家に居て」

「はい」

声は悪くない。


「はい…じゃなくていいよ」

「は…う…」

「メアド教えて」

「ないです…」

「…ねーの?」

「はい…あ、う…」

「じゃ、いいや」



俺はさっさと退散した。
< 4 / 276 >

この作品をシェア

pagetop