天才に恋をした
アマイものは俺のもの
11-1
「中学までは私も母親やってたのよ」
母ちゃんが慣れた手つきで、紅茶をそそぐ。
「でも真咲にはずっと言ってたの。中学卒業までだからねって」
陸玖へカップを渡す。
「高校に入ったら、母親の前に女性であることを思い出してもらうわよって」
陸玖はケーキで幸せオーラ全開の中、かろうじて母ちゃんの話しにうなずいている。
「聴いてないわね?」
「スミマセン」
「そんな所もステキ!」
バカか…。
苗も一緒に食べている。
勉強を中断して、一階に降りてくるなんて珍しい。
「りっくん、もう一つ召し上がれ」
「え!いいんですか?」
陸玖の目が輝く。
「だめっ!」
思わず言った。
母ちゃんが、あっけに取られて俺を見た。
「なんで?」
「一個は親父の分!」
「…にしたって、もう一個あるじゃない?」
「それは苗が親父と食う分!」
「苗ちゃんがまた食べるの!?」
「そうだよ!」
「変なの~」
変じゃねーし。
陸玖が名残惜しそうにケーキを見ている。
お前、一個食ったろ。
母ちゃんが、鼻で笑った。
「それってジェラシー?」
「はあ!?」
頭にカッと血が登る。
「私が、りっくんばっかり誉めるから~?」
俺はイスに座り直して言った。
「…アホか!」