ハイカロリーラヴァーズ
「生徒と個人的に連絡を取っているんでしょうね」

「こ、個人的に」

「禁止されてますからね……一応は」

「そ、そうですよね」

「かい潜ってやってる人達はもちろん居ますが」

 なんだか、はっきり言わないのが気持ち悪い。松河先生……なにを言いたいのか。

「お、女の子ですか?」

「……男子生徒です。予備校の人間は、女性」

 生唾を飲み込む音が首の後ろに響く。お天気は良いのに、背筋が冷たい。

「……池田さん、いけませんね」

「は……はい?」

 背筋が、凍った。予備校の人間。それはあたしのことを言っていたのだ。相手は女子生徒じゃなくて……。

「荻野青司。池田さん、良く知ってらっしゃるでしょう」

 目眩がした。青司と会ってることがばれた。なにを見たんだろうか。一緒に居るところ? 飲んでいるところかもしれない。一緒に歩いているところかも。松河先生は、誰かに話しただろうか。予備校の人に、誰かに。

「ああ、知っているのは僕だけですよ、たぶん。ご安心なさってください」

「あの……」

「だめですよ。生徒に手を出したりしちゃ。どうせならばれないようにしてください」

 いじわるな言い方。とても良いイメージを持っているから、尚更ショックが大きい。レンズ越しの目は、笑っている。

「予備校にばれたら、クビになっちゃいますね」

「ま、松河先生、あの……せ、荻野くんは。手を出しただなんて、勘違いですよお」

 なにか切り抜けることを言わないと。これはまずい。松河先生に青司と会っていることがばれて、あとは……想像したくないし、青司にも迷惑がかかってしまう。

「あ、相談されて、進路の相談を……」

「どうして事務員のあなたに相談するんでしょうね。クラス担任は僕なのに」

「これからのことを、彼が、悩んでいたので……」

 そう、相談されていたんだ。あたしは、必死に言葉を探した。

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