ハイカロリーラヴァーズ
「そうなんです。相談で、だから松河先生が見たというのは、その時だと思います」

「無理がありますね」

「そ……そうでしょうか。荻野くんが悩んでいたので、話を聞いてあげただけ……」

「ベッドの中で、ですか?」

 あたしの言葉を遮って松河先生が話した言葉は、あたしの背中を切り裂いた。

「なん……どういうことでしょうか」

 声が、無意識に低くなってしまう。

「もう降参したらどうですか。往生際が悪いなぁ。おふたりがホテルに入って行くところを見たんです。僕」

 見下ろされるあたし。もっと小さくなってしまいそう。決定的瞬間。なんでよりによってそんなところを見られたのか。

「あの」

 もう「あの」しか口から出ない。なんて言い訳をすれば良いのか分からない。あたしは、頭が悪い。

「ふたりでホテル、なにしてたんですかねぇ」

「先生、あの……」

「認めますか? 荻野青司と、肉体関係があるって」

「……」

「その沈黙、認めたと思って宜しいですね」

 なにも言えない。ここまで責められて、大逆転できるカードなんて持っていない。うつむくことしかできなかった。

「さて、どうしましょうか」

「先生、このことはどうか……」

「言いませんよ。僕も悪党にはなりたくない」

 少しほっとした。なんて言われるだろう。クラス担任の立場からしたら、受験に邪魔になるから別れろとか……。

「どうせなら、大悪党になりますね」

「……え?」

「僕の言うこと聞いてくれないと、ばらします」

 ショックで凍った背筋とは逆に、頭に血が上った。交換条件か。

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