間違ってても、愛してる
カツカツとヒールの音を立て、不自然なほど急ぎ足で歩く私の後を、藤井君が心配して付いて来る。

私、何やってるんだろう。

バカみたい.......



涙で目の前が霞み、ただでさえ酔いでフラついていた身体が、突然、バランスを崩した。

ヒールをはいた足がカクンとなって転びそうになった瞬間、後ろから伸びて来た腕が私を抱きかかえた。



「ほら。やっぱり平気じゃない。」



フラフラ状態の私を、藤井君は壁を背もたれにして立たせた。

こんなに弱ってる所を見られたくないのに、彼の顔は息がかかるほど近くにあるし、右手は私を支えるように腰に回されたままだ。

恥ずかしさと戸惑いで、彼の目を見ることができない。

鼓動だけが速まって行く中、乱れた私の髪を整えながら、彼が切なげに囁いた。



「無理しないで下さい。」

「.....してないよ。」

「俺の前では、嘘つかなくていいです。」

「嘘ついてない.....って、ば。」



言葉を遮り、夫とは違う男の人の匂いが、私を壁に押し付けるように包み込む。

壁を背にした私は、その温もりに抗うことができない。
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