間違ってても、愛してる
夫には暫く触れられてもいない。

こんな風に抱きしめられるのは、いつ以来だろう。



抵抗するべきなのに、身体中の力がじんわりと抜けて行く。

ホッとして、とても心地良くて、彼から伝わる温かさに涙が溢れそうになる。



「良かったら、うち来ませんか?」

「え? 」

「もう一回、二人でお祝いしたくて。」

「でも.....。」

「楓さんが寂しそうにしてるの、嫌なんです。だから、このまま一人にしておけない.....。」



誰かに気にかけてもらうことがこんなに嬉しいなんて、すっかり忘れていた。

彼が囁く言葉の甘い響きに、私の頑なな心が融け始めた。



これは許されることなのかな?

夫を裏切ることになるのかな?



踏み止まる理由はいくらでもあるのに、彼の魔法にかかった私は、もう正しい判断を下すことができない。

寂しくて、温めてほしくて、大切に思ってくれる彼が愛しくて.......

気付けば、彼に身を委ねる以外の選択肢が、頭の中から抜け落ちている。
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