【短編】真夜中のサンキャッチャー
振り返ると彼はすぐ後ろにいた。少し首を傾げるようにして、私の顔を覗き込む。


「あの……」
「少し顔色、悪いよ」
「そ、そうですか?」


そう答えると小井川さんは更に首を傾けて私を見る……睨むみたいに。


というか。
……近い。

シトラスの匂いが更に強くなる。


「何か……」


私は思わず後ずさりした。でもここは窓際。背中はすぐ冷たいガラスに当たった。

小井川さんの右肩が動く。腕を上げてる。そしてその先の手のひらは私の顔に伸びてくる……。

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