【短編】真夜中のサンキャッチャー
「オフィスで倒れてね。医務室は定時までだし、失礼は承知の上でここまで送らせてもらった。すぐ帰るつもりだったけど心配だったから」
そう言えばタクシーに乗せられたところと、マンションの鍵を鞄から出すところの記憶がうっすらと蘇る。
そのときもシトラスの香りがした。
「あ……ありがとうございます。あのもう大丈夫ですから」
壁の時計は22時を回っていた。もう夜も遅い。ぶつけた肩を押さえながら私はベットを下りた。
「あの、本当にすみません。大丈夫ですから。あの、もう遅いですし、小井川さんも明日……」
「大丈夫大丈夫って、全然大丈夫じゃないでしょ」
「でもご迷惑ですし、本当に」
「迷惑じゃないから」
「でも」