そんな恋もありですか?

ドン!
守田の右手は
思いっきりあゆの行く手を塞ぐように、
壁に衝撃を与えた。

マグネットで貼られていた掲示物がバラバラと音をたてて床に転がり落ちて、
大変、拾わなくちゃと思い下を向いた顔を
左手で持ち上げられる。

「どこへ行くんだよ」

「どこってあの?」

「ほかの男のところになんか行くな」

「ええと、男って?誰の事ですか?」

「ごまかすな、携帯にメール来てただろ?」

「へ?卓のことですか?」

「男の名前だろ?」

「はあ、まあ。
 甥の名前です。
 今日実家に姉が来てて、
 パンケーキ持って行くって約束したから、
 まだかっていう催促メールだったんです。
 でも、 焦がしちゃったから、もう持ち帰れないし
 怒られちゃいそうです」

ははっ

守田は息を吐くように笑った。

さっきまでの怖い顔がいつの間にか消えていて、

「あ」

ふわりと
優しい表情に変わる瞬間を目の当たりにした。





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