そんな恋もありですか?
誰もいない厨房で、水の音と、シンクに当たる無機質な音だけが
悲しく響いていた。
どうして急にあんな態度に?
あゆは大切なものを急に取り上げられたような気分になって、
泣きそうになっていた。
卓からのメールが来るまでは、
あんなに優しかったのに。
休憩室を通ろうとすると、
帰ったはずの守田がまだいて、
「なんだ、まだいたのか」
とぼそりと言った。
「すみません」
そのまま通り過ぎようとするあゆの手をがっしりとつかんだ。
「なんでお前なんだよ」
「え」
「ドジだし、
大して美人じゃない、
そのうえ、
男たらしか」
「手、離してください」
「ああ」
手は離しても
守田はあゆの行く手を阻んでいて、
じりじりと壁側に追い詰められてしまった。