そんな恋もありですか?
「わ、これ……」

「昨日のやつ、

 こいつは一日たった方が上手いんだ。

 温めてあるから食べてみろ」


「いただきます」

昨日あゆが失敗して強く焼け色がついてしまったパンケーキを

卵液にくぐらせてフレンチトースト風にしたやつだ。

「ん、おいしい。

 シェフこれすっごく美味しいです。

 マーマレード挟まってますか?」

守田はニヤッと笑って、


「正解!

 これは褒美だ」

目の前のカップに甘いフレーバーティを注いだ。

「わあ、甘い香りがすっごくこれに合いますね」

「お客様から頂いた、

 マンゴーティだ。

 さすがに店には出せんが合うだろう?」

満足そうに笑った。

(あ、また)

営業スマイルでない優しい顔。

今までの鬼のような印象とのギャップに

戸惑いながら、

(この人、本当は優しい人なんだな)

と、思った。

♪♪~

携帯の着信音

「あ、卓からのメールだ。

 シェフ済みません、ちょっと連絡してきます。」

席をはずして連絡して戻ると、

さっきまでの優しい表情は消えて、

いつもの不機嫌そうな顔に戻っていた。

「すみませんでした」

と言う謝罪の言葉など聞こえないように、

「お前、忘れてるぞ」

と、冷たい声で言った。

「あっ!」

もう出す時間をとうに過ぎているオーブンに走り寄った。

すでに焦げて煙が出ていた。

「ああ~」

と落ち込んでいると、

守田は声を出して笑うと

「まあ、せいぜい後2週間がんばるんだな。

 早くその失敗作持ってさっさと家に帰れ

 片づけと鍵閉め忘れるなよ」

と言って、

あゆ一人を残して帰ってしまった。
















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