女子力高めなはずなのに
俺を覚えてもらうのも重要だが、その前に中野さくらに槇村を近づけない、というミッションが俺にはあった。

槇村が中野さくらに手を出そうとしていることは知っていた。

だから、階段の所で槇村が中野さくらを食事に誘おうとしているのを見た時、とっさにバケツを手に取った。

その瞬間槇村と目が合ったが、宣戦布告として目が合ったまま、ニヤッと笑ってバケツを投げた。

アイツの驚いた顔、笑える。

俺が本気で邪魔するつもりだということは伝わっただろう。


ただ、彼女の足にバケツをぶつけてしまったことだけは計算外だった。靴を濡らすくらいにしたかったのに。悪いことをした。

そして腹立たしいことに、「ささ、こちらに」と言って手を引いた中野さくらは、俺のことなんて全く覚えていなかった。確かに昨日はかなり酔っていたからな……。

俺がふわふわしてやったんだぞ。化粧落としてやったんだぞ。

……まあ、仕方ない。これから少しずつ覚えてもらうさ。

手を洗ったというのに、一緒に床を拭いてくれた中野さくら。
人に尽くすというより、君はお人好しだな。
< 119 / 325 >

この作品をシェア

pagetop