女子力高めなはずなのに
あの朝、井川さんが帰った後、お兄ちゃんが心配してすごい勢いで電話をかけてきた。

あんまり心配するから、つい「会社の人が来てくれたから大丈夫」と言ってしまったけど、お兄ちゃんの中ではその『会社の人』の存在が後を引いているらしい。

「本当はお前、そいつと付き合ってるんじゃないのか?」

「そんなんじゃないよっ!」

「だいたいねえ、お前ももう30なんだから、いい加減男の一人でも紹介してくれよ。お兄ちゃんは心配だっ!」

「まだ30じゃ、ありませーん」

「同じようなもんだろ」

「29と30は大きく違いますぅ」

「いいから、その会社の男を紹介しろ!」

「だから!そんなんじゃないってば」

私たちのやり取りを見ていた美鈴さんが、ふふっと楽しそうに笑った。

「その時が来たら紹介してくれるわよね?さくらちゃん」

「……」

美鈴さん、……その時は、来ないの。

だって、あの人には他に想う人がいるんだもの。
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