女子力高めなはずなのに
あの日、着替え終わって帰ろうとしていたら、ノムさんから「ちょっと」と手招きされた。

「課長、風邪ひいちゃってさ、かなり悪いみたいなんだよね。さくらちゃん、様子見に行ってくれない?私、料理とかできないし」

なんで私が?

「井川さん、彼女いるんじゃないんですか?だってほら、心に決めた人がいるって……」

「ああ、彼女?たぶんいないよ。じゃあ、頼んだからね!」

「ええー?」

笑顔で手を振ると、ノムさんはさっさと帰ってしまった。

……でも、井川さんが風邪を引いたのは、きっと私のせいだ。

私が床に触れないように抱き締めて、自分は冷たい床に一晩中座っていたんだもの。

抱き締められた温かい腕の感触を思い出すと、切なくなる。

また胸がキュウッと痛くなった。

……違う。

違うの!

私はあんなドジを好きなわけじゃないの。

でも、風邪をひいたのが私のせいなら、ちょっとだけお見舞いに行ってあげようかな。

それとも、心に決めた人が看病してくれてる?

スマホを何度もポケットから出したりしまったりを繰り返して、迷いに迷って、結局電話をかけた。
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