女子力高めなはずなのに
そうじゃなければいいのにって思ってしまう。

仕事だけじゃなくて、私だけの井川さんでいてほしいって思ってしまう。

そんな変なこと思っちゃうから、おかしなこと言うのやめてほしいのに。

やめてほしいのに、井川さんはまた口を開いた。

「そんなにがんばらなくても、お前はすごくいい子だよ」

心に響いてはっと目を開いた。

やめて……。

怖いよ。

また私の心にズカズカ入って来ないで。

そんなことを言われると見透かされているみたい。

私なんて、がんばらないと存在できないんじゃないかってたまらなく不安なこと。

……いや。

いやいや、落ち着いて!

井川さんは仕事上って意味で言っているかもしれない。

うん、そうだよ。

「さっき言い過ぎたとか思ってるの?それならもう楽しい授業ごっこで十分癒されたよ」

「そういうことじゃないよ。お前はそこにいるだけで価値があるって言いたいだけ」

やめて……、それ以上言わないで。

「化粧なんかしてなくても、料理なんか作ってくれなくても、がんばらなくてもお前はそこにいるだけで価値があるんだよ」

胸がキュウッと痛くなった。

なに、私の心を鷲掴みにしてんのよ!

そういうことは、心に決めた人に言いなさい!

胸の痛みに耐えられなくて、うつむいたらぽろっと涙がこぼれ落ちた。

井川さんが近寄ってくる。

私のすぐ横の椅子に座った。

一瞬、抱き締めてほしいと願ってしまって、すぐにそんなのダメと思い直した。

思い直したのに。
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