女子力高めなはずなのに
それに、井川さんはお父さんの状態も既によく知っているし。

全部話してしまおうかな。

私のこと。

家族のこと。

……。


「今まで誰にも話したこと、ないの」

「そうなんだ」

触れた小指が温かくてくすぐったい。

くっついてるのはほんの少しの面積なのに、繋がっているような気がする。

「特別に井川さんには教えてあげようかな。本当に特別だよ……」

「それは光栄だね」

井川さんが私に興味を持ってくれるなら、話してあげる。

私の全部を見せてあげる。

……全部っていうのはオーバーかもしれないけど、これは誰にも言ったことのない私の秘密だもの。


私は、私とお父さんとお兄ちゃんのことをよく思い出しながら、ゆっくり話をした。

お母さんが出て行ってから、お兄ちゃんは家に寄り付かなくなったこと。
お父さんと二人の生活は苦しくて、食べるのもやっとだったこと。
お酒を飲んで暴れるお父さんから逃げて、いつも押入に隠れていたこと。
お兄ちゃんが助けてくれて、二人で暮らしたこと。

うつむいて考えながら話す私の横顔を、井川さんはじっと見ているようだった。

その間もずっと小指は触れていて。

そのわずかなぬくもりに、目一杯甘やかされているような気がした。
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