女子力高めなはずなのに
「そう、合格して入学はしたんだよ。だけど、結局一度も行かなかった」

「え?」

せっかく受かったのに?

「大学に合格した途端に部屋に引きこもっちゃってさ。燃え尽きたんだろうね、きっと」

入るところまでかんばったのに、エネルギーを使い果たしちゃったってこと?

「そんなの意味ないじゃん!」

そんな大学に行けるってだけでもすごいのに!

私が目を丸くして勢いよく突っ込んだから、井川さんは苦笑いをした。

「そう、意味ないよね。それから兄貴は一歩も部屋の外に出ないし、部屋に誰も入れない、いわゆる本物の引きこもりってやつになってさ。
それなのに、兄貴がそんな状態でも母親はまだ兄貴が自分の期待に応えてくれるって信じてるみたいだった」

「……」

お母さんは何をそんなにお兄さんに期待してたんだろう?

「でも、急に状況が変わったんだ。兄貴が自殺したんだよ」

「……そうだったんだ」

死んだって聞いた時、ちょっとそんな予感はしていた。

やっぱり、自殺なんだ……。

「で、俺だけが残ったわけ。名前の通り長男になってさ」

「そんな……」

井川さんは少し沈黙した。

「……でも、兄貴が死んでから家には一度も近づいてないんだ」

「ずっと?」

「そ、ずっと」

「そうなんだ……」
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