女子力高めなはずなのに
井川さんはフッと笑った。

「お前は『帰らないの?とか、家、継がなくていいの?』とか言わないんだな」

「え?……うん」

それは、それぞれの考えがあるだろうし。
部外者の私が無責任なことは言えない。

……でも、もし井川さんが家に行ったらどうなるんだろう。

親御さんは井川さんを長男として迎えるんだろうか。

そんなことってある?

でも、そうだとしたら、井川さんはお兄さんの代わりでしかないってことだよね?

そうなることが分かってるから、それが嫌だから、家に行きたくないんじゃないの?

お兄さんの代わりにされるって、分かっているから。

……。

井川さんにとって、私も誰かの代わり……。

指を絡めるのも、話をするのも、本当は他の誰かにしたいのに、私をその誰かの代わりにしてる。

でも話を聞く限り、代わりにされるのがつらいって、井川さんが一番よく分かっているんじゃないの?

それなのに私を代わりにするの?

……ひどい人。

それなのに。
それでもこの人を好きだなんて。

代わりでもいいから隣にいたいと思うなんて。

心は私に向いていないのに……。

猛烈に悲しくなってきて、またぽろっと涙が落ちた。

「……うぅーっ」

「えっ?なに?どうした?」

井川さんは驚いて私を覗き込んだ。
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